厨房はメインシェフタイ人1人、アシスタントシェフタイ人1人、中国人1人、前菜や、切り出しタイ人1人、中国人2人、洗い場兼雑用日本人のわて1人。計3:3:1のフォーメーションで日々営業が行われた。ホールスタッフはオーナーであるタイ人女性のボスを筆頭に周りを固める中国人3人体制である。
お客様は全て地元のオーストラリア人のみである。初日に体験した営業はちょっとしたサーカスやエンターテイメントのように感じた。中華鍋からは絶えず炎が出て、すごい速さで食材が調理されていく。飛び交う言葉はお客様には勿論英語、厨房内はタイ人同士はタイ語、中国人同士は中国語、タイ人と中国人のやり取りは英語、私の独り言のみ日本語という形である。よって私には何一つ言葉が通じないので映画の中のワンシーンにいるような楽しさがあった。厨房内で相手に言葉を届かせるために皆大きな声になり、タイ語も中国語も強く聞こえ、まるで罵声を浴びせているかのように聞こえてしまうが、たまにある笑いで怒っていないことを理解する。私はというと日本にいるときにインド料理屋で皿洗いの経験はあったので、黙々と下がってきたお皿を洗い、シェフ達から裏にある食材や調味料を取ってこいと言われればそれを取りに行くという雑用をしていた。
初日はよく分からないまま、怒涛のように時間が過ぎ、いつの間にやら営業終了が近づいていた。片付けの作業や1日の締めの作業などを教わりながら、ゴミ捨てに外へ出て空を見上げると、日本で見ていたどこまでも続くと思っていた空と同じような夜空が一面に広がっていた。
日本の月も星座も真逆の国 南半球のオーストラリア
オーストラリアは日本とは季節が真逆なので、クリスマスは夏に訪れることは有名である。
なので夜空もオーストラリアでは北極星は見えずに、常に南十字星が見える。
ゴミ捨てをしながらオーストラリアの夜空を見上げ、程良い疲れと緊張が少しだけ解け、普段は気にしていなかった夜空を見て、今オーストラリアのタスマニア島という小さな島の外国人だらけの中で汗かいて働いている自分が、幸せで、生きているという実感を感じていた。ゴミ捨てを終えてレストランに戻ると、ボスとみんなが集まってお金を数えていた。
よく分からずに近づくとボスが私にもコインを何枚かくれた。
わて「??これ何ですの??」
ボス「今日お客様から頂いた全てのチップよ!」
わて「??チップ??」チップの文化圏にいないのですぐには理解できなかったが、オーストラリアはチップのある文化圏であった。
ボス「私のレストランではホールスタッフが頂いたチップは営業後全て集めて、厨房スタッフ、そしてあなた洗い場のスタッフにまで均等に分けるのよ!」
なるほど!全く知らなかったが、これは有難いし、このボスの考え方でみんなに分配する方法を取っているというのが、全てのレストランで行われているわけではない事を後で知った。ホールスタッフが直接もらえるので、そのホールスタッフ自身が全て得るお店が通常のようだ。そしてもう一つ日本と異なることが、営業後車のないスタッフは、ボス自ら車でスタッフを送ってくれるのだ。夜は危険が多いということもあるが、これもとても有り難かった。私は働けていることも、このボスの考え方や、仕事ぶりなども、とても勉強になった。
これからもここにいる間は色々学ぼうと思っていた。
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